2011年12月14日水曜日

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2011年8月26日金曜日

日本TFT協会 カンファレンス 2011年



 平成23年度総会及びカンファレンスが、去る7月17日(日)国立青少年オリンピック記念研修総合センターで開催されました。今年度のカンファレンスは、東日本大震災の問題を重視し、「災害支援」をテーマとして一般公開の形でした。

1. 災害支援チームからの報告
2. 被災地(宮城、福島)からの報告
3. TFT災害支援セミナー「PTSDの理解と寄り添う支援」 
 【ゲスト・スピーカー: スザンヌ・コノリー先生】
トラウマの生物学的反応
TFTの応用

今回は、スザンヌ先生の来日もあり、米国のPTSD治療情報、TFT協会の国際的災害支援報告、また、カンファレンスの前後に、「TFT臨床応用講座」「TFT一般向けセルフケアセミナー」「家族のコミュニケーションとTFT」「女性のためのTFT」と盛りだくさんのワークショップが開催されました。
 参加した方々は、一般の方が自分でできること、家族のためにできること、専門家が臨床に応用できることなど、TFTの応用の広さを体験できたことと思います。

 特に臨床家にお勧めなのが、スザンヌ・コノリー先生著の「TFT思考場療法 臨床ケースブック」(金剛出版)です。本書は、特にさまざまな心理療法に精通した著者の事例集になっており、喪失と悲嘆、トラウマ治療、自尊心の低下、性の問題から現在主流の認知療法・行動療法との併用までクライエントにあわせたTFT適用技術の数々が展開されています。




2011年5月18日水曜日

日本TFT協会災害支援 第一陣 活動報告


日本TFT協会 会長 精神科医 佐藤克彦
(2011.4.29.-5.5)

【はじめに】

    このたびの東日本大震災において、日本TFT協会は、医療機関からの要請を受けて、7日間のゴールデンウィークに宮城県山元町の病院を拠点とした災害支援を行った。公的機関では援助職の援助は後回しにされがちである。それは公的機関の性質上、やむにやまれないことであるが、援助職こそが支えられなければ、そして敬意をもって大切にされなければ、被災地の援助は成り立たない。

    そこで私たち日本TFT協会は、私的機関として、「援助職の援助」を主眼に置いた活動を行った。一方で病院担当者の方から避難所の巡回活動をご提案いただき、現場保健師との日程調整まで行っていただいた。そのため私たちは、避難所の方々への直接的な援助までも行うことができ、個別・グループ・避難所含め100名ほどの地元の人たちと関わった。

    精神科医2名、カウンセラー2名、看護師1名の合計5名が互いの得意分野を生かしながら、それぞれに並行して活動を行った。ゆえにその全体像をまとめるのは至難の業である。したがってこの記録も、あくまで「私の」とらえた活動報告であることをお断りしておきたい。願わくば個別性のなかに普遍性があらんことを・・・などと期待している。この私の拙い記録から、被災地の方々のために役立つような普遍的な何かが、少しでも見出せたなら幸いである。


【1日目】-2011.4.29.-

東京から2台の車で早朝出発した。東北自動車道は大渋滞だった。サービスエリアも渋滞で休憩もほとんど取れず10時間、夕暮れ時にようやく山元町の病院に到着、すぐに病院担当者と打ち合わせに入り、他のメンバーは個別相談に入った。

打ち合わせでは大きな方針が確認・共有された。それは第一に、この支援ボランティア活動は決して「TFTのための」活動ではなく、あくまで「被災地の方々のための」活動であること、したがって第二に、被災地の方々に役立つことこそを最優先とし、その限りにおいてTFTを活用していくこと、ゆえに第三に、ときにはTFTを使わないこともあるし他の方法も必要に応じて柔軟に活用していくことが確認された。また、公的機関ではどうしても援助職の援助は後回しにされがちであり、だからこそ私的機関として日本TFT協会は、援助職の援助を大切にしていきたいという方針を伝え、ご理解をいただいた。


【2日目】-2011.4.30.-

    チームの中で、個別相談、グループ相談、避難所に分かれて活動を行った。

    私は午前中、周辺施設の管理職の方と面談を行い、被災状況やこれまでの経緯などを教えていただいた。こちらからはスタッフのケアを中心とした心理教育のあり方や、今後の対応についての若干の助言をさせていただいた。

援助職とは援助を与える職業であるがゆえに、自分自身が逆の立場に立って援助を求めることがやりにくい職業である。管理職とは従業員を管理すると同時に援助を与える職業であるがゆえに、自分自身が逆の立場に立って援助を求めることがやりにくい職業である。しかも管理職はその役職の少なさの分だけ相談先が少ない立場であるため、どうしても一人で抱えこんで孤独になりがちである。すなわち援助職の管理職は、三重に援助を求めにくい立場であり、逆に言えば三重に、敬意とねぎらいと援助を得るに値する立場と言えるのではないだろうか。私はそこに想いを馳せながら、「同じ援助職」という同業者としてのつながりを確認しつつ、援助することを心がけた。


    午後は、現場担当保健師の方との打ち合わせを行い、避難所の様子を詳しく教えていただいた。別の「こころのケア」チームが隔日で保健師も含めた心のケアを行っていることが確認され、まだ回っていない人たちをカバーすることにした。

    夜は、別の施設職員の方々向けにグループワークを実施した。前半はTFTの実践法を紹介し、後半は他メンバーが数名の個別対応を行い、私は管理職の方々をメインに、スタッフへの心のケアを中心とした対話を行った。


【3日目】―2011.5.1.―
   
    病院や施設でのスタッフへの個別相談と、避難所訪問の二手に分かれて臨機応変に対応した。私は臨床心理士とペアで、避難所訪問を中心に活動した。

避難所ではプライバシーの確保が難しい。また、日々のやりくりもしていかなければならない。過去を振り返り気持ちの整理をしようにも、実際にはしにくいし、実際問題としてしている場合でもない…と言えるかもしれない。このような状況のなかで、どのような「心のケア」ができるのだろうか。

「こころのケアに参りました」と声をかけても、「わざわざ遠いところからご苦労様ですねえ」とねぎらってもらう一方で、「ウチは間に合ってますから。もっと大変な人がいますから…」などと遠慮されてしまうことがあったがそれも無理のないことだろう。

そんな避難所の方々との対話をしていく中で私たちは、TFTを「長引く避難生活の中で生じている、体の凝りや痛みに対する、自分でもできるツボ押しの方法」として紹介することが増えていった。(TFTは体の凝りや痛みにも一定程度の効果が期待できる。TFTならプロの鍼灸師や指圧師がいなくとも自分でツボ押しができる)。すると「じゃあ、ちょっとやってみようかな」と乗り気になっていたけることが多かった。そしてさっそく痛みのアルゴリズムを行うと凝りや痛みが一定程度、緩和がされる。ホッと一息。

そして「体の凝りや痛みってストレスからも来るでしょう?としたら、ストレスに対するツボ押しもあって、それをやってみてもいいかも知れません」。そんなふうに追加して、不安・ストレス・トラウマのアルゴリズムを一緒に施行。グッと症状が緩和され、「いやあ・・・ずいぶん楽になったなあ・・・ところでストレスと言えばねえ・・・」と被災した出来事や現在の悩みを語っていただける。

それらに対してもTFT。スッと楽になった。憑き物が取れたような感じ。頭に鮮明に染み付いていた記憶が薄れた。ついさっきまで追い詰められ、思いつめていたのに、視野が広がって、デンと構えられるようになった。問題から距離を置けて、落ち着いた。失った家族のつらい記憶がグルグル回っていたのが収まって、家族との楽しい記憶を思いだせるようになった…等々、さまざまな効果を体感していただけた。

締めくくりでは例えば、「こんな状況では苦しさを完全に解消することは無理かも知れません。でもその苦しさがあまりに大きすぎると立ち往生してしまい、一歩も前に進めなくなります。だからその苦しさを、ほどほどの量に減らすとか、ちょっとの間だけ脇に置くとかして、休めるように、あるいは前に進めるように、TFTを活用してみてください」などとお伝えした。


【4日目】―2011.5.2.―

この日も個別相談とグループ相談、避難所に分かれて活動した。
午後は医療管理職を対象としたグループワークを行った。ASD/PTSDの心理教育を行い、長時間暴露療法やEMDR等を含めたいくつかのPTSDの治療法の情報提供も行った。

TFTはこれらのなかでも、副作用を心配せずにセルフケアとしても活用できるという特徴があることを説明し、実演・実習を行った。またPTSD以外にも活用可能であることを以下のように説明した。

「このような状況では、ある程度の不安は当然だし、ゼロにもならない。それにそもそも不安というのは、不安であるがゆえに危険を回避できたりもするのだから、本当は必要で大切なもの。でも大きすぎて頭にこびりついてしまい、そのせいで為すべきことが為せなくなってしまったら逆効果。だからそういうときに、その不安をちょっと横においたり、ちょっとゴシゴシと減らしたりするのにもTFTを使うとよいでしょう」。

夜は森川理事長によるTFTの講演会が行われた。医療、教育、役所、自衛隊、ボランティア、一般の方々など、みなさん多忙な中60名以上が参加してくれた。「不安や体の凝りなどの不快な感情・身体感覚によって前に進めなくなるのを、それらをちょっと脇に置くことで前に進めるようになる」という紹介で、痛みとトラウマのアルゴリム・鎖骨呼吸法を紹介された。鎖骨呼吸法では居眠りする方々も見られ、今までずっと緊張状態だったところでこれが若干のリセットになったかもしれないと期待された。


私は講演会の前置きとして5分程度、挨拶することになり、以下の内容をお伝えした。

①今回の震災によって、皆さん、それぞれ、様々な(自分にとって)意外と思われるストレス反応をしているかもしれない。でもこれらの反応は、皆さんが異常なのではなく、事態が異常なのである。そして異常な事態に対して正常な反応をしているだけなのである。

②それらの反応のなかでも、「自分はこれほどまでに弱かったのか」とか、「我々の故郷はこれほどまでに脆いものなのか」などと考えて、自分を責めたり、いじめたりしてしまうかも知れない。
しかしそうやって自分を責めていじめること自体もまた、異常な事態に対する正常な反応なのだから、そのことで自分を責めたりいじめたりする必要はないのだということ。受け入れ、許し、認めていただきたい。

③なかでも「自分のやり方はこれでいいのだろうか?」「本当に自分は役に立っているのだろうか?有害なことはしていやしないだろうか?」と自信を失っている方もいらっしゃるかもしれない。
しかし今回のような大きな震災は、我々の誰一人として経験していないのである。したがって我々は等しく初心者なのであり、誰も正しい方法を知らないのだ。だからどうか、自信がないからといって、最善の方法を知らないからといって、ご自分を責めないでいただきたい。こんな自分を受け入れ、許し、認めていただきたい。
そのようにご自分のことをあるがまま受け入れていただいたうえで、さらに少しでも気持ちが楽になれるように、TFTをご活用いただきたい。


【5日目】―2011.5.3.―

前日と同様に個別相談と避難所に分かれて活動した。脇道に逸れるが、ここでは、その日にまわった避難所で体験した、ミニ・コンサートについて紹介したい。

それは(自らも被災者である)地元の太鼓のサークルによって開催された慰問のミニ・コンサートであった。この太鼓サークルは、三陸の被災地にも呼ばれており、そこでも互いに励まし合うためのコンサートをするとのことであった。太鼓などの楽器の一部は津波に流され、演奏者も本来の人数より少なく、普段よりちょっと迫力に欠ける、さみしい演奏なのだという。

しかしいざ始まってみれば、その十数人の太鼓集団による演奏は、祈るように、叫ぶように、避難所中にこだました。どんな困難にぶつかろうとも決して絶えることのなく躍動し続ける、たくましき生命の荒ぶる鼓動。それを直接体に教えてくれる力強い太鼓の響きが、私たちの体を文字通り震わせた。暖かい拍手、観客との一体感。

これもまた、ピア・カウンセリングの見事な一形態なのだろう。これは「地元」の「太鼓」の「サークル」であるがゆえにできることであり、「部外者」の「心」の「ボランティア」ではできない癒しなのだろう。それがここに、厳然として存在していることを感じさせられた。



午後には、活動の総括として、地元の保健師さんたちと打ち合わせ、災害精神医学における全体の経過についての説明を行った。ここでも、お互いの本音や我々の今後の活動予定についてシェアできる貴重な時間となった。

【6日目】―2011.5.4.―

    山元町での第一陣活動の最終日である。最後に一番の窓口になって周辺施設や避難所に奔放いただいた医療機関スタッフとお互いの労をねぎらい、佐藤は病院近辺の被災状況を見学した。

    病院は小高い場所に建っている。数分歩くと下り坂になっており、下がったところから先は一面にがれきの山であった。一瞬、戦争による焼け野原のような錯覚に陥る。しかしそれは燃えてはいない。焦げくさくもない。湿っている。破壊されたそれらの建物や家具や日常品や衣服はすべて、泥まみれになっているのである。

少し坂を登った線から先は何事もなかったのようなのどかな緑に包まれ、住居があり、田畑があり、花々が咲き乱れていた。農家の方が農作業をしている。日常がそこにあった。再び下り坂のほうを振り返ると一面が真茶色である。はるか遠くに松林が見える。ああ、そこが海岸線なのかと分かる。海岸線からまさに自分が立っているここまでの間がずっと破壊されまっ平らにされてしまったのだと実感した。

    避難所で出会ったある高齢の女性が語ってくれた。家族を失い、自宅を失い、田畑を失い、着のみ着のままの自分だけが残った。でもここ(避難所)はみんな一緒。だから大丈夫。つらいのもみんないっしょ。だから大丈夫。でもちょっと外を見ると、普通に農作業をしているのが見える。それがつらい。

ある一線を境にこれほどまでに運命が分かれてしまう。不平等が生まれてしまう。これが津波被害の最も特徴的で残酷な面なのかも知れない。私たち、援助職は、この点を念頭において、様々な罪悪感や怒りに向き合っていくことが肝要と思われる。


午後からは今後の活動のために、石巻の施設訪問、次いで郡山での活動打ち合わせを行い、翌日東京に帰着した。


【さいごに】

    このたびの災害で犠牲になられた方々には深く哀悼の意を表すると共に、被災された皆様には謹んで心よりお見舞い申し上げたい。

そして、支援活動にご協力いただいたみなさまには深く感謝を申し上げたい。みなさんのご理解、ご援助とご協力なしに私たちの活動はありえなかった。(特に、病院の責任者になっていただいた先生と、全活動の窓口をしていただいた先生、ならびに保健所訪問の調整に奔走いただいた保健師の方には、並々ならぬご配慮とご足労をいただいた)。

支援活動に尽力をされている世界中の人々にもエールを送りたい。私たちも支援活動を続けていく。

    がんばろう?・・・いやいや、そうじゃない。

    何度もがんばってきたんだ。

    そして今もまた、十分にがんばっているんだ。人類。

2011年3月30日水曜日

新しい心理療法 TFT :その応用と人道的支援

<災害支援のご参考になればと全文を公開いたしました>

 アメリカの臨床心理のパイオニアの一人 Callahanが 70年代の終わりから新しい心理療法の研究を始めた.

 それが,Thought Field Therapy(TFT;思考場療法)で,心理療法の分野では全く新しい画期的な手法である.TFTの登場で,体のエネルギーに働きかけるエネルギー・セラピーが米国で数多く誕生したほど,心理治療に新しい視点をもたらした.

 TFTは,東洋医学と科学を統合させたアプローチである.西洋はもともと心と体は別のものとしてとらえ,心の科学を心理学という一分野の領域として発達させてきた.一方で,東洋医学は心と体は一つであるという「心身一如」の考えを基本とし,疾病を「心身相関」として捉えている.人を大宇宙の中の一つととらえて,人体も小宇宙であり,自然界のすべてのものと対外に関連し,影響しあっているという考えを基本にしているため,病気の原因・症状・体質・精神状態を統合的に捉え,治療も全身の調整に重きをおいて行われる.

 Callahanは,東洋医学の中の体のエネルギー(気)の視点から,経絡に作用させて症状を改善させていく方法を応用し,心理的問題に対する治療を科学的に発展してきた心理療法に融合させた.

 TFTの応用範囲は非常に広く,専門家の臨床だけでなくセルフケアとしても適用可能という,心理学の分野では非常に稀有な手法である.また,経絡のツボを指でタッピングするという簡便な方法で,恐怖,不安,緊張,悲しみ,怒り,強迫,抑うつ,パニックなど,広範囲な心理的問題を軽減させていくだけなく,身体的な違和感,疼痛にも作用する.シンプルな手順は数分でできる上に,副作用がないという便利なツールである.

 近年,ストレスによる疾患が急激に増えており,ストレスは心理的な問題や医学的な問題を悪化させている.

 医療や心理の臨床では,治療が困難だとされてきた恐怖症やトラウマに対して,TFTは非常に短時間で高い効果が得られるところから実践的な方法として広がってきており,深刻なケースへの応用も行われている.

 一方で,心理療法やカウンセリング以外の分野で,ストレスや不安に対して,TFTを手早く使うことも可能である.医療現場で看護師が患者の不安に対して使ったり,学校で先生が生徒の不安や恐怖に対して使ったり,身体的な問題を扱う整体師が,怒りや悲しみに起因していると思われる疼痛に対して,TFTで感情解放を行うのだ.

 また,一般の人がセルフケアのためにいつでも気軽に使えるようセルフケア・プログラムも作られている.

 TFTセラピストはそれぞれの専門分野で TFTを使っている.東洋医学が心身一如と考えているように,メンタルケアは医療や心理の分野だけではなく,どの場面でも必要になるが,一方で,医療や心理の専門的なケアにも適用でき,両面での応用を援助するツールの一つとなりえるのがTFTで,日本 TFT協会はそれに関わる援助職のネットワークでもある.

 TFTの活動は世界に広がっている.特に,海外の活動ではボランティアでの人道支援が継続的に行われており,TFT協会での活動だけでなく,他の援助組織との連携活動も年々増えている.

 大規模な事件との関わりでは,1998年,ナイロビのアメリカ大使館がテロリストにより爆破され,300人近い死者,5000人以上の負傷者を出した際に,体の痛みと深刻な恐怖に苦しむ負傷者に対して Edwardsが TFTを行い,著効した事例が紹介されている(Callahan,2001).

 テロのような大事件へのボランティア活動は,その後,2001年の 9.11同時多発テロ事件や 2004年のロシア学校占拠事件にも行われている.

 2000年から TFTチームが 5回に分かれてコソボ地域に入り,内科医たちと完全に破壊された山村を周り,紛争に対するトラウマ治療を行った.
 Johnson, Shala, Xhevdet, Odell, and Davishevci(2001)の研究調査によると,105人のつらい体験(合計で 249個のトラウマ)に対して TFTを行い,103人(247個のトラウマ)に改善が見られた.そのうちの 76%への追跡調査を数ヶ月後に行ったところ,全員に再発は見られず,少なくとも 76%には再発が見られなかったことが報告されている.

 2006年に TFT協会(米国)のトラウマ・リリーフ委員会(TRC)によるボランティア・チームが,他のボランティア団体とともにルワンダの ElShaddaiにある孤児院での人道支援に参加した.
 ルワンダは,1994年までに民族同士の内戦,大虐殺,エイズ,そして蔓延する病気と貧困に苦しんでいる地域で,子供たちは,悪夢,フラッシュバック,80万人もの大虐殺の恐怖,夜尿症,抑うつ,ひきこもり,孤立,集中力・落ち着きの欠如,攻撃的などの症状を呈していた.
 一行のミッションは,「TFTを用いてトラウマの傷を癒すこと,ルワンダ人とコンゴ人に TFTをトレーニングし,同志の過去の傷を癒す援助ができるよう,また強く,平和で,健康的な国家に前進する援助,そしてルワンダに癒しと安定をもたらす援助をするため」.
 食料や工具,ミシンなどの技術支援,教育支援の必要性のアセスメントのほかに,TFT協会は内戦や大虐殺によるメンタルケアを担った.

 あまりに残酷で悲惨な体験を次々に施療者も通訳も聞かされることから,彼ら自身も二次的トラウマ(間接被害)を受けないよういっしょにタッピングしたり,セルフケアでタッピングしていた.
 TFTにはこのようにサポートする側もセルフケアとして使える特長がある.ルワンダでの PTSDプロジェクトは,2007年ボストンにおける TFT協会のカンファレンスで報告された.

 父親に「思いっきり早く走れ.そして何があっても決して振り向くな」と言われ無我夢中で走った 15歳の少女.しかし,彼女は背後に父親の悲鳴を聞き,振り返ってしまったのだ.彼女はそのフラッシュバックにずっと苦しんでいた.
 悲惨な出来事を思い出したくなかった子供たちの緊張してこわばった表情がどんどん和らいで,つらかった出来事を語れるようになったシーンがビデオで公開され,時折涙ぐんで言葉を詰まらせる発表者に会場から惜しみない拍手が沸き起こった.

 10代の戦争孤児の言葉である.「TFTでぼくの怒りが楽になりました.TFTはぼくの人生を変えてくれて,怒りに振り回されないようになりました.ぼくの人生は大きく変わった……ぼくは他の子たちから自分を孤立させていましたが,この問題も変わりました.ぼくは,他の子と関わらないようにもしていましたが,TFTをしてから,他の子たちと自分から関わるようになったり,いっしょにいられるようになりました.ぼくは,
話しかけられるのもいやでした.誰かにいやなことをされると怒りでいっぱいになっていました.でも,もうそういった問題で,自分がわからなくなってしまうことはもうないのです.本当に人生が大きく変わりました」 .

 1年後にTFTチームは大虐殺記念日にElShaddaiを再び訪れた.すると施設は,子供たちによってとても清潔に保たれており,野菜や木が育てられ,食事には野菜が多く並べられるようになり,余った野菜は市場に売られ,1年前には全く見られなかった光景があった.子供たちからフラッシュバックも悪夢も激怒も消えており,自分たちでタッピングする姿も見られたのだ.

 子供たちの教員からは,PTSDの症状がなくなり勉強への集中力が出てきたこと,夜尿症や攻撃的な行動,集団からの孤立や抑うつが著しく減少し,自己評価や自信が高まってきたという大変うれしい報告がなされた(Oas, Connolly, & Sakai, 2007, October).このような人道的支援は,PTSDプロジェクトとして現在も継続している.

 2005年8月末,大型ハリケーン・カトリーナがアメリカ南部ルイジアナ州,ミシシッピ州を襲い,ジャズの町ニューオーリンズは 8割が水没した.ルイジアナ医療センター・ニューオーリンズ(MCLNO)から TFTのサポート要請があり,2006年 1月,TFT協会からトラウマ・リリーフ・チームが現地に派遣され,医療センターのスタッフや現地の専門家,ボランティアを含む援助スタッフ 100名以上に TFTのトレーニングを行った.

 まだ,多くの人が避難している状況で,物資も不足していて,現場は混乱しており,援助スタッフもそれぞれの仕事で手一杯で時間が取れないため,状況に応じて小グループに分けて,短時間で1日にミニワークョップを何度も繰り返し行い,スタッフが交代で TFTを学び,それぞれの現場で活かしてもらった.その実績と効果が認められ,TFTグループはその後も再びニューオーリンズへの援助を求められた(Baladerian, 2008).

 この支援がよいモデルとなり,緊急支援のためのワークショップが,緑十字や Figley研究所との協賛で英国でも行われた.

 日本 TFT協会も海外の大規模な援助活動を参考にして,2007年に起きた長崎県佐世保市の銃乱射事件の際に,地元にて専門家向けの緊急支援用トレーニングを行い,スポーツクラブ・ルネサンス社の従業員のメンタルケアを早期に行い,1ヵ月後の再開には全従業員復帰の一助となった(森川他,2009a).

 米国の警察官や消防士に関する調査では,同僚の殉職があると離職する人が増えることがわかっている.そのような状況への援助として,同僚への悲しみ,仕事の不安や恐怖などのメンタルケアに TFTを活用するためのワークショップが行われている.日本では,この分野での大規模なワークショップはまだ行われていないが,警察署の被害相談や役所の心理相談,児童相談所などでもTFTが活用され始めている.

 TFTの活用は,このような災害や心的外傷への援助だけに限っていない.TFTは,能力の向上にも応用されている.TFTで「心理的逆転(PR)」と呼ばれる現象が起こっていると本来持っている能力がうまく発揮できないため,「PR」のポイント(手のひらの横の真ん中あたり)を 15回ほどタッピングして,この逆転を修正する.米国の学校で TFTを生徒に使っている教員が,テストをする前にこの PRポイントをタッピングしてもらうと凡ミスが少なくなると報告されている.

 2007年,札幌市の公立中学校でも PRの効果の研究が行われ,中学 1年生 93名に PRタッピングを行い,テスト前後でデータを比較したところ,何も行わなかったグループは,関係のないポイントをタッピングしたグループよりも正解率のアップが見られ,PRタップが集中力や処理能力を高めるという結果を示唆した.研究者は,「タッピング前のテストよりもタッピング後のテストの方が時間が長く感じられた」「タッピングしただ
けで正答数も解答数も上がって驚いた」など効果を実感した感想が生徒たちから得られたと報告している(河岸,2009).

 医療現場では,102名の看護師に TFTで職場でのストレスケアを行った研究がある.森川・山下・福井(2009b)の研究によると TFT前後と 2週間後のフォローアップで解析し,統計的有意が見られ,特に特性不安に著しい効果が見られた.

 さらに,内科や外科の病棟でも,手術前の不安に対して,看護師が患者に使用してもらったところ,著しい改善が見られたという臨床報告がされている.

 海外では,心臓発作,癌,多発性硬化症,高血圧症などに応用された症例が報告されている.

 TFTは,心理的な問題だけでなく,身体的な問題そのものにも焦点を当てられるところから,医学的な治療,理学療法,リハビリテーション,整体などとも併用して使われており,これからさらに応用が増えてくることが予想される分野である.

 最近は,HIVやがんの補助治療としての応用例の報告が増えている.1990年に HIVに感染していると診断されたHanson(2002)は,T細胞がたった 30しかない(正常値は800~1100)ことがわかりショックで抑うつとなった.

 その後,ウィルスがこれ以上進行しないようエイズ・カクテル療法を行ったが,吐き気,嘔吐,下痢,慢性疲労,深刻な胃痛,コレステロールの激増,動脈プラークなどの副作用に苦しみ,コレステロールの増加や体重の激増で身長 172cmで体重は145kg となった.2001年,Hansonは狭心症となり,ステント移植で狭くなった心臓の冠動脈を広げる手術を行い,胸の痛みはなくなったが,数日後に心臓発作を起こしてしまった.

 それからまた AIDSの治療に戻り,言葉にはできないほどの副作用のつらさに耐えていたが,改善はとてもゆっくりだった.そのころ HansonはTFTに出会い,これらの副作用を改善した.Hansonの HRV(心拍変動:心臓の突然死の指標であり,心筋梗塞の予後研究で 24時間測定した心拍変動が 50以下の患者は突然死のリスクが高くなる)は 6であり,それを TFT直後には 3倍の 18まで改善した.

 その後,Hansonは TFTのセルフケアで食生活のコントロールを行い(依存的衝動の改善),体重を落とし,コレステロール値を健康的なレベルに戻し,心理的なストレスから副作用の軽減まで TFTでできることをすべて行った.2002年の10月には,少しずつ増加していた T細胞が 690を超え,HRVも87.3となり,Hansonは今でも元気に TFTの活動を行っている.

 アフリカのタンザニアでは,マラリアの治療にTFTが応用されている.マラリアによるストレスや本人がもともと抱える心理的トラウマに対して TFTを活用できるのだが,マラリアの症状そのものに対しても活用して,HRV(心拍変動)や血液検査により改善が見られている.

 マラリアは,世界中で年間 3億人以上が感染し,その犠牲者は 200万人以上に達するという.悪寒や高熱,顔面紅潮,呼吸切迫,嘔吐,頭痛,筋肉痛などの症状があり,高熱が持続し,意識障害や腎不全を起こすタイプのものもある.

 2004年,Science News の記事で,マラリアやデング熱などの蚊媒介性疾患は,体の電気的な現象だと生物学者の Racquelが発表したことが,TFTの応用につながった(Cowly, 2006).

 1940年代のエール大学の教授 Barrは,生きる物すべてにエネルギーの極性があると提唱している.その生徒の Langmanが婦人科系の腫瘍がある患者とない患者それぞれ約 80名に対して電圧計で極性を測定してみると,腫瘍がある患者の90%以上がマイナスで,腫瘍のない健康な女性の90%以上がプラスであるという研究結果を報告した(Callahan & Callahan, 2000).

 TFTの「心理的逆転」という概念は,体のエネルギーの極性が逆転している現象である.逆転を修正できる TFTなら,もしかしたらマラリアに有効ではないかと,TFTを行ってみたところ改善が見られたため,ボランティアチームによるアフリカ・プロジェクトが誕生した.

 現地の医療スタッフや学校の先生に TFTを教授し,必要なときにいつでも対処できるよう指導した.全員に治療が行き渡らない上に薬の足りない地域であるので,一度覚えてもらえば自分でもできるテクニックはとても経済的で便利なツールとなる(Cowly, Hernandez & Milbank, 2006, Winter).支援は継続されており,血液検査の改善と平行して,表 1の通り,マラリアの血液検査で陽性と出た者について HRV(心拍変動)の改善結果が報告されている(Callahan, 2006).

米国の TFT協会は,ATFT基金を設立し,人道的支援のプログラムを継続的に行っている.アフリカ地域だけでなく,中南米や他の地域でも,村を襲った洪水や事件などニュースでは大きく取り上げられないような災害に対しても,現地でサポートできる人たちをアメリカに招待してトレーニングしたり,TFTセラピストを派遣したりして,なるべく多くの人が TFTを活用できるように支援している.

このように TFTの活動は多岐に亘っており,TFTが活用できる分野も地域もさらに広がっている.

人間の心はエネルギー(すなわち「気」)であり,人間の体を流れるエネルギー,体を覆うエネルギーは,私たちの心だけなく体の健康にも大きく関与している.

エネルギーに作用するセラピーは,古代中国から発展してきたいろいろな方法があるが,これほど手順をシンプル化して誰もが使えるように体系化できたのは,アメリカの科学と合理的な文化の中で育まれてきたからかもしれない.

現実に直結している臨床のためのセラピーとして発展してきた TFTは,今後,その可能性はもっと広がるだろう.副作用のないストレスケアとして,今後もより多くの人に活用していただき,一助になればと願う.

表1 TFT前後の心拍変動(SDNN)スコア
(N=7, マラリアの陽性反応が出た者のみ)

TFT前 / TFT後 / 差異
13.9 / 28.9 / 15
31.5 / 37.5 / 6
118 / 173.6 55.6
57.4 / 50 / -7.4
21 / 89.3 / 68.3
81 / 242.3 / 161.3
66.9 / 69.5 / 2.6
計 389.7 / 691.1 / 301.4
平均 55.7 / 98.7 / 43.0

(森川綾女著 Journal of Thought Field Therapy Vol.1 No.1 2009より)

2011年3月15日火曜日

東北地方太平洋沖地震について

 このたびの東北地方太平洋沖地震におきまして、犠牲になられた方々のご冥福をお祈りし、また被害に遭われました皆さま方には心よりお見舞いを申し上げます。
どうか一人でも多くの命が助かりこれ以上被害が拡がりませんよう心よりお祈りいたしております。
いまだ行方の分からない方々がどうかご無事でありますように願うばかりです。

 世界各国に広がるTFTのネットワークからも数多くのお見舞いおよび支援のお申し出をいただいております。
 TFT協会は、コソボやルワンダにおける紛争やハリケーン、津波などの災害支援を行っており、国内でも佐世保銃乱射事件を支援いたしました経験を活かして、支援の準備を進めております。
 
 まだ被災地が大混乱している中、救助活動、安否確認、安全やライフラインの確保などが優先されることと思いますが、毎日不安な日々を過ごされる方々の少しでもお役に立てるのではないかとTFTのタッピング法を公開させていただきました。
 いくつかのパターンがありますが、災害時にはどれを使っていただいても構いません。お子様やお年寄りの方、けがをされている方などには、他の方がやさしく行っていただくこともできます。
 また、被災地以外でも不安な毎日を過ごされている方が多数おられると思います。少しでも
落ち着いて過ごすことができるようご活用ください。

 また、関係機関および団体の方で、当協会でご協力できることがあればご連絡ください。


2010年8月16日月曜日

痛みはタッピングでさよなら ―ハイチからルワンダ―


 TFTの人道支援チームは、現在2つで、喪失のつらさ、トラウマ、悲しみや恐怖など、地域のリーダーにTFTで近所や家族、同僚を援助する方法を教えています。
 TFT協会英国基金の理事Howard医師とPhyll Robinsonは、カリフォルニアから来てハイチの地域活動に従事するCarolie Jean-Muratの健康管理チームに合流し、治療や32人の地域リーダーたちにTFTを教え、被害の著しいPort Au Princeエリアの子どもたちや避難民への援助を始めてもらいました。
 我々の災害援助は、ウガンダやルワンダでの支援活動が経験となっています。
もう一つのチーム、ルワンダでは、継続的な支援とPTSD研究のフォローアップが行われています。

2010年7月
TFT協会基金 理事長 Joanne Callahan

キャラハン博士 エネルギー心理学会より「生涯功労賞」受賞!



 私の30年のTFT研究の功績がたたえられ、500人以上の参加者から大きな拍手で祝福されました。
 「3年前にあなたに命を救われた」と言ってくれた方、久しぶりに会えた方、初めて会う方など、他人を援助することに同じように情熱を捧げている方々に暖かく迎えられました。
 また、妻Joanneとともに、「TFT-30年のヒーリング」ワークショップでTFTのパワーと30年間の軌跡に、会場は総立ちで拍手喝采でした。初期のころの「キャラハン・テクニック」から大きな進化を遂げて「TFT」となったことに驚く方々もいました。
 また、我々TFT協会基金チームのSuzanne ConnollyとCaroline Sakaiらによる学術研究に対して、学会のトップ研究者であるDavid Feinsteinらからも盛大な拍手が贈られました。
 みなさんに感謝します。

2010年6月
Roger Callahan